よるの底

闇を受け入れて光を目指すOL

過敏性腸症候群(IBS)で不登校になった話 1

私は今、社会人3年目で、一般企業の事務として働いている。

高校、短大を卒業して社会人になるのなんて、人間の一般的な通過儀礼だけど、私にとってはものすごく奇跡に近いもの。こうやって社会人になって、毎日働いて、給料で生計を立てて生きていけるなんて、中学生の頃の私が知ったら驚くだろうな。

 

今日は私が生きてきた中で最も辛かった過去のお話。あれからもう10年経つけど、あの暗黒期を忘れたことなんて一度もない。

 

✱✱✱

 

私は中学生の時、自他ともに認める超真面目な生徒だった。授業の予習・復習はもちろん、テスト前は1ヶ月前からコツコツ勉強。課題もきっちりこなし、自分で言うのはなんだが、先生からの評価も高い模範生だった。

 

それに加えて、私は頼まれたら断れない性格だった。キャパオーバーだと分かっていても「NO」と言えない。「いい子でいなきゃ」「失望されたくない」という思いが強かった。

 

今思えば、承認欲求が人一倍強かったのだと思う。褒められたい・認められたいが故に能力以上のことを引き受ける癖がついていた。だから、都合よく使われることもしばしばあった。

 

中学2年生になった頃。私は仲が良かった友人達と別のクラスになってしまった。

正直クラスの中で気の置けない友人がおらず、学校の居心地が悪くなった。

さらに、1番仲の良かった当時「心友」と呼んでいた友達が、中学1年生の後半から、突然私のことを無視するようになった。理由が分からず、悪い事をした覚えもないため謝るのも違う。でもどうしたらいいか分からない。結局それも解決しないまま進級してしまったため、クラス外にも居場所がない。

 

この時点で私の心はだいぶすり減っていた。

中学生の頃なんて、行動範囲も限られてるし、経験も少ない。「学校」か「家」の2つがこの世の全てだと思うくらいに視野が狭かった。

世界の半分がしんどさで埋まっている。

当時自覚はなかったが、もう限界は近かったのだと思う。

 

それにトドメを刺すように、今度は担任から学級委員長になるようにお願いをされる。

本来、学級委員長は立候補で選ばれるが、めんどうな仕事が多いため、やりたがる人は少ない。

担任も困っていたのだろう。言い方は悪いが、真面目で頼まれたら断れない私の性格に付け込まれた。

人前で発言するのも目立つのも大嫌い。

先頭に立ってみんなをまとめるなんてもってのほか。

けれど、承認欲求の奴隷だった当時の私は、当然断れる訳もなく、二つ返事で引き受けてしまう。

 

学校の居心地が良くなくて、苦手な仕事を毎日しないといけなくて、学校に行くことがとても苦痛だった。でも「いい子」でいないといけないと思い込んでいたから無理して頑張っていた。

 

そんなある日…

 

教室でいつも通り授業を受けていた。すると、なんだかお腹にガスが溜まって苦しくなってきた。我慢ができず、音を出さずに放屁してしまった。

すると、私の3つくらい後ろに座っていた男子が

「なんか臭くね?」

と言っているのが聞こえてしまった。

一気に心臓が冷たくなった。その臭いの原因は間違いなく私。

 

-私だってバレたらどうしよう

-ただでさえ居場所がないのにさらに居づらくなる

-「真面目でいい子」のイメージが崩れる

-何より女子がおならなんて恥ずかしい

 

冷や汗が止まらない。

結局、私が原因だとバレたのかどうかは分からなかった。だが、男子が言った「なんか臭くね?」がずっと頭から離れず、その日の授業は全然頭に入ってこなかった。

 

ここからが地獄の始まりだった。

 

お腹にガスが溜まるのはその日だけで終わりではなかった。翌日も、翌々日も、その次の日も…ずっと私を苦しめた。

ガス漏れの恐怖がストレスになり、さらにガスが溜まってしまう負のループから抜け出せなくなってしまったのだ。

 

ずっと脳内をおならがバレてしまう恐怖に支配され、授業やテストに集中することができない。

そのストレスでさらにお腹にガスが溜まる…

 

何より最悪だったのが、毎週月曜日の全校集会。

とにかく人口密度の高い場所はおならがバレる可能性が高いため、避けたかった。

なのに、学級委員長はクラスの最前列に座らなければならなかった。しかも、ガスが出やすい体育座りで長時間耐えなければならない。

いつも後ろに座っている人達に「本当にごめんなさい。臭くてごめんなさい」と思いながら苦しんでいた。

 

そして、次第に周りの言動に過剰に反応するようになっていった。

例え私のおならのことを言っていなくても、

コソコソ話す声や、「くさっ」とか「くそ」とか末尾がさ行で終わる言葉に敏感になったり、

近場の人が鼻をつまんだり、鼻に手を当てるような仕草をしたりする人が気になったり、

咳払いをする人にも私がガス漏れ女だとバレているのではないかと恐怖心を感じるようになった。

 

毎日が本当に地獄だった。

 

-なぜ私だけこんな恥ずかしい悩みを抱えなきゃいけないのか

-どうせ悩むなら、「親が離婚した」とか人に相談しやしくて同情してもらいやすい内容ならよかったのに

-もう何人かにはバレているのでは?そうに違いない

-私は真面目に生きてきたはずなのにこれはなんの仕打ちなのか

ーなんでよりによって周りにも迷惑をかけてしまう悩みなのか

-いつまでこの状態が続くのか。まさか…一生?

 

誰にも悩みを打ち明けられず、どうしていいのか分からない。毎晩1人、部屋で泣いていた。

 

こんなに心はボロボロだったのに、表向きは「いい子」でいるために、なんともない顔して学校に通っていた。約5ヶ月。(夏休みを除くと4ヶ月か)結構頑張ったと思う。いや、頑張りすぎてしまった。

 

こんな状態でいつまでもいられる訳もなく、中学2年生の10月。遂に限界が訪れる。

 

《続く》