転職活動日記
「あなたが仕事以外で人をサポートしたことがあるエピソードを教えてください」
面接官の女性が画面越しに私に明るく尋ねる。
「…えー、少々お時間いただいてもよろしいでしょうか?」
頭の中が忙しなく動く。
なぜ仕事以外!?仕事のことならこじつけて話せるのに!!
あーもうとにかく探せ!どこかにあるはずだ、私が人を助けた経験が!!エピソードが!!
どこだどこだどこだ!!なぜ見つからない!!
答えが見つからない私は、無言をさけるために
「友人関係においては、聞き手になることが多いです。友人に寄り添って、相手が欲しい言葉を考えます。」
というような、絶対コレジャナイ感が溢れた言葉を口走った。
「あ、なるほど。わっかりましたー」
面接官の若干引きつった笑顔が画面越しでもはっきりと感じられた。
後日、メールを開くと、案の定「ご期待に添えない結果となりました」と、見慣れた定型文が転職エージェントから届いていた。(これだけが理由じゃないだろうけど)
分かっていたが、私はあの時なんと答えるべきだったか、冷静になった今でも思い浮かばない。
私は人の支えになるようなことを今までしてこなかったんだろうか。
自分のことに必死で周りが見えていなかったんだろうか…あるいは、見えているのに見えていないフリをしていたのだろうか。
自分はそれなりに頑張ってきたと思っていたけど、ただの自己満足で、誰のことも助けられてなかったのかもしれない。
ダメだ。また自信喪失モード。
ってか日常におけるサポート経験ってなんやねん。
部活のマネージャーでもやってれば良かった?
介護とか、家族の手伝いとか?
どれだけ探しても、人をサポートしたエピソードは出てこない。
でもそのかわり、人にサポートされた経験はたくさん思い出した。
たくさんの人に助けられて生きてきたことを、転職活動で思い知らされるとは思ってもみなかった。今まで、人からのサポートを当たり前のように受け取り、きちんと感謝できていなかった…ということなのかもしれない。まったく愚かである。
そしてもうひとつ思い出した。私はこれまでの人生、どちらかというとリーダーになることが多かったのだ。
今の仕事だって、言ってみればリーダー職だ。
だけど、私は一度だって自分がリーダーに向いていると思ったことはない。
自分がリーダーになって上手くいったことがまずない。今だって上手くいってない。
じゃあ私は一体どういう役割が向いているんだろう?
何者にもなれない。もしかして、チームワーク向いてない?社会人向いてない?
「はぁ…どうしよ」
今まで適当に生きてきてしまった過去の自分を恨みながら、今日も求人票を漁る。